所得拡大促進税制、正式には、雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除です。
大企業に配慮した改正
大企業といえども適用要件の1つである①適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額に対する増加率5%はそのハードルが高く、また、雇用者の新規採用に比して今後もかなりの退職者が見込まれることから、もう1つの適用要件である②平均給与等支給額が前期の平均給与等支給額以上とはならず、結果、この特例が適用できないこととなる事態も想定されることから、平成26年度税制改正で次のような改正が行われました。
1つは、増加率は平成26年度2%、27年度は3%、平成28・29年度5%、そして、もう1つは、継続雇用者をベースにした平均給与等支給額の算定と平均給与等支給額が前期のそれを超えるとする改正です。この2つの改正により、大企業でもこの特例を容易に適用できる環境が整いました。
ちなみに、この継続雇用者とは、雇用保険の加入対象者で給与等の支給を受けた国内雇用者であり、前期と適用年度のいずれの事業年度においても給与等の支給を受けた者です。加えて、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に基づくところの継続雇用制度の対象者は除く、とされています。
中小企業への配慮があってしかるべし
いったい何が問題なのか、ですが、対象となる雇用者給与等支給額から、使用人兼務役員の給与等支給額は除かれている、ということです。そして、その上で、適用年度の給与等支給増加額が基準年度の給与等支給額の2%増の要件を満たさなければこの特例が使えない、ということなのです。
仮に、基準年度において、使用人であったものが、その後の適用年度において役員、例えば、取締役経理部長、取締役営業部長といった役員に昇格した場合、当該使用人兼務役員になった者の給与等は基準年度では雇用者給与等支給額に含まれ、一方、適用年度において除かれることになり、適用年度の給与等支給額が基準年度のそれを上回ることにはならず、結果、この特例の適用を受けられない可能性は大となります。
平成26年度の税制改正においては、中小企業のこの点にも配慮した、使用人兼務役員の給与等支給額の取扱いについての改正が望まれたところでした。