やはり起きていた税務係争
平成19年に相続がおき、相続税申告では3198万円余で評価した土地を、平成21年に3000万円で譲渡した事例があります。
これについて納税者が、相続税で時価課税済みなのだから、譲渡所得税が課税されるとしたら二重課税ではないか、と問うて国税不服審判所に審査請求しています。
審判所は、法律で課税を容認しているとして、訴えを棄却しています。
前提としての二重課税違法判決
所得税法の非課税規定として、「相続、遺贈又は個人からの贈与により取得するもの」が挙げられており、最高裁は、平成22年7月6日の判決で、これは 「相続税又は贈与税と所得税との二重課税を排除する趣旨の規定である」、との見解を表明しました。
この判決で争ったのは、相続課税された年金保険をその後の各年で年金受給したときの所得税の非課税でした。
審判所は荷が重すぎるとして逃げの一手
審判所は、最高裁の二重課税判決は、生保年金所得に限ってのものである、としてサッと切り捨てています。
相続課税と譲渡所得課税は明らかに二重課税なのですが、これを深く採り上げて論じようとはしていません。裁判所で結論を出してもらってよ、という姿勢です。
最高裁判決の射程範囲はどこまで及ぶ
最高裁判決を承けて、昨年の税制改正で、被相続人に生じている未実現の利子や配当等は、実現した段階で相続人に二重課税されるという新規定が挿入されることになりました。譲渡所得などのように二重課税が明文化されたわけです。
すくなくとも、最高裁判決の射程範囲が生保年金所得に限られるものではなかったことは税務当局も理解しているわけです。
しかし、二重課税を明文化した規定と、二重課税排除規定とが所得税法にそのまま並存する場合、二重課税排除規定を無視するのが正しい法解釈なのか、問題は残ったままです。
最高裁的解決方法は両立だった
相続税の課税部分を超過する場合にのみ所得課税を容認する、というのが最高裁の判決内容でした。
その最高裁見解が、生保年金だけでなく、譲渡所得にも当て嵌まる、となるのかどうか、税理士としては大きな関心のあるところです。