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後条優先の原則と所得税法の矛盾

2013年11月30日 | 消費税

所得税法の中の矛盾しあう諸規定

所得税法第5条(納税義務者)は、居住者は、この法律により、所得税を納める義務がある、と規定し、第7条(課税所得の範囲)で、非永住者以外の居住者に対しては、すべての所得に課税するとしています。
従って、通常の日本人なら、全ての所得に課税なのですが、第9条(非課税所得)で、次に掲げる所得については、所得税を課さない、としています。矛盾しています。
そして同条の十六号で、相続、遺贈、贈与に係るものは所得税非課税と規定していながら、第60条で、相続、遺贈、贈与に係るものは被相続人、遺贈者、贈与者の所有期間を引き継ぐとして、第9条で非課税としたことを無視し、矛盾した関係になっています。

後条優先の原則があれば矛盾解消

第〇条の規定に拘わらず、との前置きがあれば優先劣後の関係が明確になり、矛盾がないのですが、先の7条と9条、9条と60条には、矛盾を排除する前置きがないので、矛盾したままです。
もし、後条優先の原則というものがあるとしたら、先にある条文に対して後ろにある条文を優先して適用することになるので、矛盾は解消します。

相続取得財産の譲渡と非課税規定

第9条の非課税規定と第60条の譲渡益課税規定を矛盾なく両立させるべきで、相続時課税額を超過する部分のみ、譲渡益課税の対象になるべき、と主張して訴訟していた事案で、地裁の判決がありました。
判決は、第9条と第60条を両立させることは、事実上第60条をおよそ適用の余地のない条文化することになるが、そのようなものとして定めているとは考え難いとして、後条優先の原則があるかのような結論にしています。

二重課税禁止の構造的・原理的意味

しかし、問題なのは、平成22年7月の最高裁の相続年金二重課税禁止判決です。後条優先の原則を採らずに、9条非課税と年金所得課税を両立さる判決でした。
最高裁は、相続税・贈与税と所得税は二重課税となってよいのだとの原理を否定し、二重課税は排除されるべきとの原理に立って判決したため、譲渡所得課税と9条非課税とを両立させるべきとの主張は、起きるべくして当然に起きてきたのです。
後条優先の原則があるとすれば、最高裁も事態を複雑にしなかったと思われます。

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