個人課税に関しても「秋の大綱」がありますが、その内容は設備投資等減税に関するもので法人課税と同様です。そこで、ここでは「年末の大綱」のうち3点に絞ってその改正内容を取り上げてみます。
給与所得控除の上限引き下げ
控除の見直しは、民主党政権下で成立した「税制抜本改革法」第7条で検討事項として上がっていたものです。
現行の控除上限額は、給与収入1,500万円超で245万円ですが、改正では、平成28年分の給与収入1,200万円超で230万円(住民税は平成29年度分から)、平成29年分以後の給与収入1,000万円超で220万円(住民税は平成30年度分から)となっています。
少人数私募債利子の節税封じ
報道等のタイトルでは、特定公社債の範囲の見直し、となっています。この少人数私募債利子に関しては、過度の節税対策として利用されていることに鑑み、昨年改正されました。
しかし、その解釈では、たとえ同族会社が発行し、当該同族会社の役員等が支払いを受けるものであっても「平成27年12月31日までに発行された社債」は、特定公社債に該当し、結果、平成28年以降支払い受ける利子には申告分離課税(平成27年までに支払いを受ける利子は分離課税)20%が適用され、総合課税の対象外となってしまうことが判明しました。
そこで、今年度の改正で、特定公社債から同族会社が発行した社債を除外し、当該同族会社が平成27年12月31日以前に発行したものであってもその同族会社の株主等が平成28年1月1日以後に支払を受けるものは、総合課税の対象としました。
新株予約権発行会社売却による節税封じ
報道等では、ストックオプション課税の適正化、というタイトルになっています。
現行法における非適格のストックオプションでは、新株予約権の付与後、権利行使して株式を取得、取得と同時に市場で売却すれば、その所得区分は給与所得して総合課税の対象になります(取得と同時の売却は、通常、譲渡所得課税はない)。
しかし、付与されたストックオプションを権利行使せずに発行会社に売却すれば、その所得区分は申告分離課税になります。
そこで、今年度の改正で、平成26年4月1日以降の譲渡から、発行会社への譲渡対価の額を、給与所得等とみなして、総合課税の対象にすることとしました。