源泉所得税の納税義務者は支払側です
源泉所得税制度は、給料や報酬の支払時に、支払者側の責任で源泉所得税を天引きし、原則として支払日の翌月10日までに支払者が国に納付する制度です。税収の事前確保と申告漏れ防止の目的があります。
源泉徴収義務は支払側にあります。納期限までに申告・納付しない場合には、罰則や罰金は支払者側に対して課されます。そのため、支払側では、その支払が源泉徴収対象の支払なのか否かの確認を十分に行わなければなりません。
対価や報酬を受け取る側で源泉徴収の対象であることを理解していない場合で、請求書に源泉税控除の記載がない時でも、源泉漏れとなると支払者側の責任になります。
特に、個人事業の翻訳業者やデザイナー、外国法人からの使用料の請求書には、源泉税の認識がなく、源泉漏れとなることがありますので、十分注意が必要です。
国内法人相手の支払は源泉税なしが常識
一方、支払の相手先が国内の法人である場合には、源泉についてほとんど注意する必要はありません。相手先が内国法人で源泉徴収が必要な支払は、利子や配当などの特定のものであり、報酬や支払対価での源泉控除は通常考えなくとも構いません。
なお、配当支払など非日常的な支払時には税理士にご相談ください。
※ただし、所得税法第204条第1項第2号の報酬等に該当する場合は、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出は必要。
弁護士法人への報酬支払時には要注意!!
内国法人に支払う報酬・料金等で源泉徴収の対象となるものは、馬主に支払われる競馬の賞金のみです。国税庁のタックスアンサーでも「税理士法人や弁護士法人は、いずれも内国法人に該当しますので、源泉徴収は不要です」と記載されています。
ところが、弁護士法人からの請求書で源泉税が控除されているものがありました。理屈として、弁護士法人は請求業務だけを行うものであり、法律業務の提供は、あくまでも個人の集まりである民法上の組合であるから源泉対象ということのようです。
請求書への支払を済ませた後で、弁護士法人は源泉ゼロだったはずと思い込んで、申告納税しないと支払者側の責任となってしまいます。弁護士法人への報酬支払をした時の源泉税の申告納付は注意が必要です。