「1人飲み」を交際費としていたことで…
最近は、コロナ禍ということもあり、どの法人も交際費支出がすっかり減りました。そのような雰囲気の中、令和3年1月に東京高裁が出した判決が税理士の間で話題になりました。
ある社長がクラブの利用代金を会社の交際費として会計処理をして申告したところ、税務調査を受け、この経費が「個人的な飲食費」ではないかと指摘されました。
実はこの支払は、その社長がひいきにしていたホステスの所属するお店で社長1人で飲んでいたもの。クラブ側にも反面調査も入り、事実が発覚します。会社側は、税務署と交渉して、この支出を「貸付金」として、費用を取消し、修正申告をしました。
交際費は、事業関係者に対する接待・供応
交際費は、①事業関係者に対し、②親睦を深めて、取引関係を円滑にする目的で行う、③接待・供応などの行為をした費用です。誰かを接待しないと、交際費とは認められません。ひいきのホステスと1人で遊興するのは、「個人的な飲食費」とされ、役員賞与とされます。この場合、法人税の損金とされず、源泉所得税も徴収されますので、税金のダブルパンチ。今回は、さらに消費税の控除も取り消されます。
「貸付金」という着地点はよくある話
ここで、実際の税務調査では、調査官から「社長はこの支出を会社に返すつもりですか?返さないつもりですか?」と聞かれることがよくあります。実は、これは「助け船」。貸付金(返すつもり)とすれば、損金として控除できなくても、源泉税の課税は回避できます。これに未収貸付金利息の計上もれと併せて、修正申告に応ずることは、よくある話です。
「隠蔽・仮装」と見られて重加算税賦課
その申告後、この会社に「重加算税」が納付書が届きます。接待をしていないのに交際費として会計処理したことが、「事実(個人的な飲食)を隠蔽し、(交際費に)仮装した」として最も重いペナルティが課されたのです。会社は納得できず裁判へ。「人脈を広げるという意味がある」と主張しましたが、東京高裁は、「(理由が)抽象的」「接待の相手方と業務の関連性の具体的説明がない」と控訴棄却の判断をしました。