今年7月、OECDでGAFAなど多国籍企業に対する新たなデジタル課税の導入が大枠で合意され、同月、イタリアで開催されたG20においても承認を受けました。合意内容はこれまでの国際租税法の枠組みを超える画期的なものとなっています。
課税はローカル、経済はグローバル
課税権はそれぞれの国が持ち、課税対象、税率などを定めます。国際的な経済活動には2国間で租税条約が締結され国内法に優先します。外国法人は国内源泉所得に課税され、事業所得は国内に有する恒久的施設(PE)に帰属する所得のみに課税されます。
一方、経済は国家の枠組みを超え、グローバル化、デジタル化が進み、多国籍企業は法人税率の低い国に拠点を構え、日本などサービス消費国にPEをもたずに事業展開することにより租税を回避できます。
OECDで合意されたデジタル課税は、多国籍企業に新たな課税の仕組みを設け、PEが設置されない消費国においても売上に応じて法人税を課税できるようにするものです。
デジタル課税の2つの柱
第1の柱:グローバル収益に課税
グローバル収益が200億ユーロを超える多国籍企業を対象に、通常利益(税引前利益率を10%として算定)を超える残与利益(10%を超える部分の利益)の20~30%に対する法人税を、PEの有無にかかわらず、サービス消費国の間でそれぞれの売上に応じて按分します。
第2の柱:最低法人税率の導入
グローバル収益が7億5,000万ユーロ以上の多国籍企業を対象に、最低税率(少なくとも15%)による法人税を課し、子会社等が軽課税国にある場合は、子会社等に帰属する所得を親会社で合算し、最低税率までの上乗せ課税を行い(所得合算ルール)、親会社等が軽課税国にある場合は、子会社等の支払う使用料等は、最低税率の課税に服さない範囲で損金算入を否認する(軽課税支払ルール)など追加納税を課します。
法人税率の引下げ競争は終焉か?
これまで経済のグローバル化の中で企業を自国に誘致すべく租税競争が行われ、世界中で法人税率の引下げが行われてきました。今回のデジタル課税で設定される最低税率は多国籍企業に対するものですが、感染症の影響により世界中で財政支出が増大する中、財源確保のため法人税率の国際的な引下げ競争にも歯止めがかかりそうです。