中小企業白書から見える人材不足の広がり
政府は2015年版「中小企業白書」を閣議決定しました。それによると必要な人材を確保できていない企業が4割近くにのぼる一方で「人材の応募があっても、良い人材がいない」と言う声も強く、中小企業が質、量両面での人材不足に直面している現状が浮かび上がってきます。
白書では高い離職率も人材不足に影響していると分析しています。新卒者の4割以上が3年以内に会社を辞めている事が不足の要因でもある事から、採用した社員の定着率を高める必要性にも触れています。
人材の採用
中小企業にとって経営の中核となる人の不足感は強く、販路開拓(営業)、研究開発、製造、IT関連、経営等多岐にわたり中核人材の不足感が強くなっています。
採用の方法ではハローワークや知人、友人からの紹介が多く利用されています。実際の採用実現率は、知人の紹介や取引先、銀行の紹介等が多くなっていますが、自社のホームページからの採用は低くなっています。顔が見える採用手段の重要性が確認できますが、人材確保の多様化は必要です。
また、人手不足による関連倒産は2013年から増加してきています。最近は求人しても人が集まらない求人難による倒産の増加が目立ってきています。
人材の定着・育成
中小企業・小規模事業者における離職率(3年目)は中途採用では3割、新卒採用では4割を超えています。小規模事業者では新卒採用の過半数が3年以内に離職をしています。人材育成を前提として社員の定着率を高める必要がありますが、育成をする能力のある人材の不足も現れています。
ベア実施中小企業は増えるが人件費は高騰
今年度に入り中小企業でも景気回復の広がりや人手不足を背景に賃金のベースアップを実施する動きが広がっています。全国の財務局調査では中小企業で今春ベア実施したのは37%、ベアを含む何らかの賃上げを実施した企業は89.1%を示しました。賃上げによる人材獲得競争がコスト増を招き経営を圧迫する中でも、中小企業も雇用確保のため人件費を捻出しています。