持分払戻し請求権とは
持分会社等(事業協同組合、持分の定めのある医療法人等を含む)の法令及び定款には、多くの場合、「社員(出資者)が死亡により退社又は脱退したときは、当該社員は出資持分の払戻しを請求することがでる」、と規定されています。
出資持分は、自己の出資した財産が持分会社等においてどの程度の割合の権利を持っているかを示すものです。
この権利、具体的には、社員の法人への出資割合10%、当該法人の財産が1,000であれば、社員の法人に対する財産上の権利は100ということになります。これが持分払戻し請求権です。
持分払戻し請求権と所得税及び相続税
この持分払戻し請求権、死亡したその社員(被相続人)に帰属するのか、また、そもそも社員は死亡しているのでその社員に帰属することはなく、その相続人に帰属するのでは、といった争いはありますが、現行の課税実務は、前者の立場です。
したがって、払戻し請求権は死亡した社員に一旦帰属しますので、当該請求権の額が資本金等の額を超えるときは、死亡した社員に「みなし配当」課税が生じ、場合によっては譲渡所得も生じることがあります。この場合、相続人は相続開始後4ヶ月以内に死亡した者の準確定申告義務を負います。
また、支払者側の法人には、みなし配当に相当する金額について源泉徴収義務が生じます。
一方、相続人ですが、持分払戻し請求権の未収金額が相続財産であり、被相続人の準確定申告に伴う所得税額は債務控除の対象となります。
死亡退職金と所得税
持分払戻し請求権に酷似するものとして死亡退職金があります。死亡退職金は、労働協約や就業規則等に基づき、死亡に起因してその死亡した者に確定的に生じますが、当該死亡退職金は、死亡した者に帰属することなく、「みなし相続財産」としてその者の相続人に帰属するとの立場で、所得税は非課税となっています。
持分払戻し請求権は、本来財産である出資持分に裏付けられているものではありますが、その請求権は死亡退職金と同様、死亡により発生・確定したものですから、所得税は非課税、みなし相続財産として取り扱ってもよいのでないか、と思料します。