自販機利用還付手法つぶしから6年
自販機利用による居住用賃貸住宅建設時の消費税還付の仕組み作りは、課税事業者選択後および新会社設立後の2年間に調整対象固定資産(税抜価格が100万円以上の固定資産)を取得した場合には、その取得があった課税期間を含む3年間は、免税事業者や簡易課税事業者になれない、また、その3年間で課税売上割合に著しい変動があると調整計算により還付消費税が取戻されることになる、という平成22年税制改正で、不可能となりました。
大企業に対しては穴だらけ
この歯止めは大企業には通じませんでした。分譲建物などの棚卸資産を歯止め規定からそっくり除外していたし、自販機利用スキームも、2年を超える大規模長期工事の場合、基準期間の存在しない期間での取得や課税事業者選択から2年以内という縛りを過ぎてしまうので、免税や簡易課税の選択に支障はありませんでした。
会計検査院報告が暴く延払基準の穴
延払基準の選択などは大企業ならではの制度ですが、この制度は収益すなわち課税売上についてのみの制度であって、課税仕入の計上については消費税法には何も規定がないので、収益は分割計上、仕入は一括計上ということになり、延払い1期目は、まず還付を受けるということになります。
さらにその翌年は、簡易課税の選択をした上で延払基準の取り止めで再度名目課税仕入れを発生させて多額の消費税納付差額の益金を計上することができます。延払基準の取り止めは、法人税法とは無関係に、消費税においてのみで行うこともできます。
特定目的会社を設立して、封じ手の抜け穴を利用するスキームは容易に構築できたようで、会計検査院報告によると、多数の事例があったとされています。
今年の税制改正でモグラ叩きは終わるか
今年の税制改正では、自販機利用抑制策の裏をかく、これらの大企業の消費税還付手法への、もぐら叩き的穴塞ぎをしていますが、延払基準の適用に関する直接的な制限規定は置かれませんでした。
創設されたのは、調整対象固定資産取得制限規定の延長としての、「高額特定資産」仕入に対する3年縛りの制度です。新封じ手により、延払基準利用による手法への適用制限などの措置を採る必要はないとの判断のようです。