2012年5月26日(土曜日)日本経済新聞朝刊一面に「消費税ゼロ 海外からの配信」、という記事が載っていました。その内容は、こうです。
海外のネット業者が、海外を配信拠点(サーバー等の設置場所等)として、音楽やパソコンの応用ソフト、さらには今後大きく展開される電子書籍などのデータを日本の消費者(企業や個人も含む)にネット配信した場合、消費税はかからないが、一方、国内を配信拠点とする国内ネット業者には消費税は課税される。消費税の納税義務者が事業者である以上、これでは、ネット取引に内外価格差が生じ、国内ネット業者にとっては著しく不利。そこで、国内大手のネット業者は、配信拠点を海外に移して、日本消費者向けの配信サービスを検討している、というものです。
議論の根底にあるもの
現行の消費税では、外国からの物(正しくは外国貨物)を輸入した消費者には、原則、消費税の納税義務はありますが、それ以外のネット配信等(デジタル化された生産物)の輸入にあっては、ダウンロード(消費)した消費者への課税はありません。課税技術上困難なこともあってか、事業者の役務提供地が国内か否か、その提供が国内か否かで、当該役務の課税対象を判定、事業者に消費税の納税義務を負わせています。
役務提供地(配信拠点)が海外で、その配信が日本向けであれば、国外取引となり事業者に消費税の納税義務はありません。
したがって、配信拠点が海外にあるネット業者にとっては競争優位であり、消費税が後々10%にでもなれば、配信拠点が国内にあるネット業者にとっては死活問題ということになります。また、ネット業者の海外移転が加速し、国内でのネット配信業者が激減し、国内での消費税課税の空洞化が進むのでは、との危惧です。
EU諸国の現状
物に比して、デジタル化された生産物等の輸入は、その取引自体を把握すること容易ではなく、その課税も困難です。そこで、EU諸国では、EU城内外のネット業者は、EU加盟国のいずれかの国に事業者として登録し、その国に消費税を一括納付、登録国は実際に配信した加盟国ごとに税金を分配する等の仕組みで、消費税に伴う経済活動の中立性を保っているようです。
日本も早急に海外からのネット配信(輸入)について、消費税の仕組みを見直さなければならない時期のようです。