相続税が必要経費とは
相続や遺贈(相続等)で財産を取得した人で相続税額がある人が、相続開始日の翌日から3年と10カ月を経過する日までに、その取得した財産を譲渡した場合は、その人の確定相続税額のうちその譲渡した資産に対応する相続税額を、当該譲渡した資産の譲渡所得の金額の計算上、その所得を限度して、必要経費に算入することができます。このことを、所得税法上、相続税の取得費加算といいます。
なお、譲渡した相続財産が土地及び土地の上に存する権利(土地等)であれば、相続等により取得したすべての土地等(物納及び物納申請中の土地等は除く)に対応する部分の相続税額が必要経費(取得費)となります。
相続税額の確定と所得税の納税義務
この取得費加算の適用にあたっては、原則、相続等により取得した資産を譲渡した年分の所得税の納税義務が成立する時において、相続税が確定していなければなりませんが、次に掲げる日のうちいずれか遅い日までに相続税が確定し場合には取得費加算の適用があります。
①譲渡した日の属する年分の所得税の納税義務の成立の時(その暦年の終了の時)
②相続税の申告書の提出期限
所得税の申告手続き
規定は、譲渡したその年の末日までに、相続税の申告期限が到来しておらず、相続税が確定していない場合であっても、取得費加算の適用可、となっています。しかし、具体的に所得税の申告手続きをどうするのか、つまり、相続税額の確定を待って所得税の期限後申告等をするのか、どうかです。これに関して、実務では次のような取扱いが認められています。
いったん、通常の取得費の計算で譲渡所得を計算、所定の税額を確定し、所得税の期限内申告をします。その後、相続税の申告期限までに相続税額を確定、当該申告書を提出すれば、その事実に基づき、所定の書類等を提出することで、当初申告の所得税は減額更正(還付)されます。
期限後申告の場合の留意点
なお、相続税の申告が期限後(3年以内)となった場合には、譲渡した年の末日までには相続税額が確定していなければ、この取得費加算の特例は受けられません。ですので、その年の末日までには期限後申告書の提出が不可欠です