銀行救済のための欠損金繰越期間延長
8年前、金融庁は税制改正要望として、銀行破綻を救うために、銀行については赤字の繰り越しの期間を5年から10年に延長することを求めました。その結果、平成16年度の税制改正では、欠損金の繰越控除期間が5年から7年に延長となり、さらに大幅な損失を計上していたそれ以前の過去3年前に適用期間が遡及することになったので、要望の10年が実現しています。
10数年ぶりの納税再開
最近の報道によると、来年2013年3月期には、すべて大手銀行において法人税の納付が再開となるようです。すでに、昨年10年ぶりに再開したのが三菱東京UFJ、今年15年ぶりなのが三井住友、18年ぶりなのがりそな、残るみずほ、三井住友トラストは来年再開です。
70兆円余の公的資金の投入後、5大銀行の連結損益はリーマンショックの年を除き、ここ8年間大きく黒字決算を続けていました。累計で100兆円を超すとされた90年代半ば以降の民間金融機関の不良債権処理がようやく終わろうとしているようです。
タイミングを合わせた欠損金制限
銀行救済の必要がほぼ無くなったこととタイミングを合わせて、昨年の税制改正で、欠損金の繰越期間が7年から9年に延長となり、繰越欠損金の控除について、控除額が80%に制限されることになりました。
この改正は、今年4月以後開始事業年度から適用となっています。
来年再開グループは新税法納付か?
そうすると、今年以前から納税開始の銀行は、リーマン危機損失を含め欠損消化を完了していることになりますが、来年は、欠損金が残っていても、課税所得の2割相当の納税が強制されるので、納税開始が来年の銀行の場合は、まだ欠損金が残っている状態での納税開始なのかもしれません。
中小法人は対象外
なお、欠損金の繰越控除の使用制限は大法人グループに限られたことで、事業年度終了時の資本金が1億円以下の中小法人は、欠損金使用制限対象の法人になりません。
ただし、経済産業省から、大企業法人税率5%引き下げの財源として欠損金使用制限案が打ち出された時は、中小企業除外の予定はなく、制限幅も50%でした。今後、なし崩しの適用拡大があるかもしれません。要注意です。