国境に消える法人所得への課税権
支店、出張所等の事業所、工場、倉庫などをPE(恒久的施設)といい、日本国内にPEを持たない外国法人は日本への申告・納税義務がなく、PEを持つ場合には日本国内源泉所得が課税対象となります。
米国Amazonは日本国内にPEを置かないままNet販売で日本顧客と取引し、米国で売上計上し、日本への法人所得に係る納税義務がないものとしています。
楽天とAmazonが同じNet書籍販売をしている場合、楽天は、日本への納税をしますが、Amazonはしないので、競争関係はAmazonに有利、楽天に不利です。
なお、このケースでは、Amazonは日本に消費税の納税はしています。
消費税も国境を越えると課税が無くなる
書籍も、電子書籍になると、流通はNet上だけで実現してしまい、国境を簡単に越えてしまいます。
輸入品には、輸入時点で、税関が『輸入者』に消費税を課しています。しかし、消費税課税があるのは、『外国貨物』に対してであって、ネットで配信されてくるものは『外国貨物』の概念に含まれません。課税実務的にも、ネット配信の商品・サービスを捕捉しきるのは困難であり、課税対象とすべき『輸入者』を捕捉することも困難なので、日本は最初から課税を諦めています。
楽天 とAmazonが同じことをしている場合、Amazonは所得課税だけでなく、消費課税からも逃れ得るので、競争優位は一層大きくなります。
それでは拠点を海外に移してしまおう
電子書籍や音楽映像などのNet配信国内企業がその販売窓口を海外法人に移すと、海外法人のNet販売売上に係る消費税はゼロになります。
それと同時に、その海外法人に、配信直前まで完成したデータを国内事業所から引き渡すとした場合には、それは、輸出売上になります。
輸入と異なり、輸出では、海外法人への役務の提供は、消費税の課税対象です。ただし、税率ゼロです。
すなわち、受取消費税はゼロ、そして、それまでの累積仕入税額は全額控除、となりますので、還付消費税を受け取ることになります。
こうして、楽天は漸く、消費税に関してAmazonと対等になります。