常識的な解釈
平成24年7月掲載と記されている東京地方税理士会ホームページ(会員専用ページ)を見ると、基準期間の課税売上高が1千万円超の被相続人が死亡したが、相続人は誰も課税事業者ではなく、相続開始の年の年末では未分割であるような場合、法定相続割合に応ずる被相続人の基準期間の課税売上高に基づいて納税義務の判定をして相続開始の日の翌日から年末までの消費税の申告を行い、且つ、翌年、未分割遺産が分割され、事業承継が確定する場合には、事業承継割合に応ずる被相続人の基準期間の課税売上高に基づいて納税義務の判定をして年初に遡及して消費税の申告を行う、とされています。
相続の遡及効は、未申告の本年に限られ、前年の申告済み消費税額について修正申告又は更正の請求による訂正はできません、としています。
国税局の解釈
ところが、平成27年3月24日付の大阪国税局の照会事例で、遺産分割協議が確定した場合に於いて、事業承継割合での判定が課税事業者、法定相続分割合での判定が免税事業者である時、相続人の納税義務を法定相続分割合で判定することができる旨明らかにされました。
また、平成24年9月18日付けの東京国税局の照会事例でも、法定相続分に応じて判定したことにより免税事業者となった相続人が、遺産分割が確定したことにより、結果として事業の全部を承継したとしても、その事実により、相続人の当初の納税義務判定が覆ることはない、としています。
考え方は、消費税は税の転嫁を予定して立法されているものであり、その年の納税義務の有無については、その年の前年12月31日の現況に基づいて判定すべきであるという、理解に拠るところです。
有利適用の為の遡及は?
ただし、この当局見解表明は、法定相続分による判定が課税事業者、事業承継割合での判定が免税事業者というような場合のように、年初への遡及効の適用を望むことがある時まで、これを否定するものではありません。照会事例の回答文書は、「標題のことについては、……貴見のとおりで差し支えありません。」と言うことであり、納税者有利の場合の有利適用を承認しているだけだからです。