士業に多かった手取額契約
昭和の時代では、税理士等士業への顧問料支払いの契約が手取額で定められ、手取額を10%の源泉税控除後の手取率で逆算して、手取額50,000円であれば〈50,000円÷0.9=55,555円〉を顧問料額とするケースが多く見受けられました。しかし、平成になり、消費税が導入され、消費税計算とこの手取額逆算とが馴染みにくかったことから、手取額契約は急速に姿を消して行きました。
給与手取額は懲罰的みなし契約
源泉徴収を無視して給与を支払っているものに対しての、取り締まり的通達も昔からあり、手取りから税込総額を逆算し、その額による給与契約と解して源泉徴収税額を算定すると、しています。最近はあまり見かけなくなっています。
定期同額は手取額判定の新推進策
ところが、平成29年改正で、定期同額給与の範囲に、支給総額の同額だけではなく、手取額の同額も含まれることとされました。
手取額とは、法令規定によると、源泉所得税、特別徴収住民税、給与から控除される健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料・厚生年金基金保険料などの社会保険料を控除した金額となっています。
役員報酬の世界での、手取額契約推進の新制度が出現したと言えます。
何遍もの役員報酬額の収束計算が必要
手取額に先の諸控除額を加算した金額が役員報酬の額となります。
社会保険料額の変更は役員報酬額の変更になりますが、課税給与の額は変動しないので、税額計算に影響しません。でも、特別徴収住民税については、その変動の都度、課税給与の総額が変わるので、それに応じて源泉所得税の額も変わります。源泉所得税の額が変わると再び課税給与が変わります。従って、源泉税率表の変更も課税給与額変動の原因になります。年末調整で追徴や還付があっても、同じです。こういう事実発生の都度、給与総額及び源泉所得税を確定させる反復計算を繰り返し、値を収束させる作業が必要になります。
また、年調対象額を超える高額給与の人は、確定申告をしますが、そこでの納付や還付の額については、どう考えるべきか、細かな取扱いはまだ未定のようです。