他人ごとではない?大塚家具の事案
IDC大塚家具の経営者の対立が株主総会の「プロキシ・ファイト」まで進展した事案が大きく報道されました。
経営者の対立構造が「父親と娘」という構図であったため、面白おかしく伝えられた面はありますが、「大きな企業は大変だな」と他人事に感じられた方も多かったのではないでしょか。
今回の騒動は、中小企業経営者の方にとっても、他人事ではありません。
外部の出資を募っている会社はもちろんのこと、同族経営であっても、ひとたび対立が顕在化すれば、関係が良好な時には気にもしなかった会社法における株主総会の規定を意識せざるを得ないのです。
経営者から見た株主総会の2大リスク
株主・役員の関係が良好な間は、「紙の上の株主総会」でも、「セレモニー化した株主総会」でも問題は生じないかもしれませんが、もともと株主総会は、経営者の立場からみれば、次の2つのリスクがあるものといえます。
①原案否認リスク
これは、会社原案が株主によって否認されるリスクです。
たとえば、会社の利益配当案が株主によって否決されれば、修正提案・修正動議が成立しない限り、配当は実施されません。配当が実施できなくなれば、経営者を信任していた株主からも責任を問う声が上がるかもしれません。一方、会社法では取締役の解任は普通決議とされています。このことから「会社原案を否認することができる総会」であるならば、「取締役を解任することができる総会」でもあることを経営者は肝に銘ずる必要があります。
②決議取消リスク
株主総会において賛成多数をもって可決された決議については、総会の日から3か月以内あれば招集手続・決議の方法または不公正等を理由に取消しを求めることができます。この決議取消訴訟が提起されると、決議が取り消され、著しく法的安定性を損ねることのほか、①株主代表訴訟の対象になりうること、②その取消された取締役の行った契約の遂行が困難になることも考えられます。