高かろう良かろう?
食い道楽を趣味にしているA社長は、あそこのお店がおいしいと聞けば何か月も前から予約をして出掛けるし、ミシュランで星がついたと聞けば嬉々として出掛けます。
満足感は値段の高さに比例すると信じていたA社長ですが、先日、友人に連れて行ってもらった下町のお寿司屋さんは、その信念を裏切るような出来事でした。いままで行った高級店と比較してもネタも腕前も劣らないレベルのものを半額の値段で食べられたのです。そこで思ったのは、値段ってどうやって決まるのかということでした。
管理会計的視点で考える
商品の値段はどのように決まるのでしょうか?ブランド価値を維持するために高めの値段設定をすることや、逆に、薄利多売で利益を積み上げる戦略もありますし、他社がこれくらいの値段だからいくらという決め方も少なくないでしょう。しかしながら、本稿では管理会計的視点で捉えることにしますので、損益分岐点思考で考えます。
算式:「値段=原価+粗利益(=儲け)」
レストランを例にとると、食材に調理人の手を加えたこと等で料理として価値が増えるので、材料費という原価(=変動費:売上で変わる費用)に粗利益という儲け部分を上乗せした金額が料理の値段となります。家賃や人件費など売上に関係なく発生する固定的な費用(=固定費)は、この粗利益として上乗せさせた部分から賄います。そのため、「損益分岐点売上=固定費÷粗利益率」で計算します。
意味は、どれくらい売上げれば固定費をカバーできる粗利益の合計となるかです。
銀座のお店が高いのは土地代も一因
固定費であるお店の家賃が高くなれば、早く損益分岐点に達するためには、儲けの源泉である粗利益の部分を上げる必要があります。これで銀座のお店が高いのは納得できますね。
改めて儲けのしくみに納得したA社長が、自社の損益分岐点の改善に取り組んだことは言うまでもありません。
そのあとA社長は“管理会計に詳しい食い道楽”(自称)になったようです。