農業所得の収入金額の計上時期
所得税では棚卸資産の収入は「販売した時」に計上することが原則ですが、農業を営む方の場合には、いわゆる「収穫基準」により収入金額を計上することとなります。
「収穫基準」とは、農作物を収穫した場合に、その収穫した時における農作物の価額(収穫価額)を、その収穫の日の属する年分の収入金額に計上するルールです。
この「収穫基準」が適用される農作物の範囲は次のとおりです。
①米、麦、その他の穀物、馬鈴薯、甘しょ、たばこ、野菜、花、種苗その他のほ場作物
②果物、樹園の生産物
③温室・ビニールハウス等の特殊施設を用いて生産する園芸作物
実際には同額の仕入金額が計上されます
ここでいう「収穫価額」とは「収穫時における生産者販売価額(庭先価額)」のことをいいます。この「収穫金額」を収穫時に収入計上しますが、それと同時に「収穫価額」により取得したものとみなすこととされていますので、同額の仕入金額を計上することとなります。例えば収穫高を1,000万円、年始・年末の在庫を各100万円、販売高を1,200万円とすると、
①総収入金額 収穫高1,000万円+販売高1,200万円=2,200万円
②原価 年始在庫100万円+収穫高1,000万円-年始在庫100万円=1,000万円
となります。
原則的にはこれらの数値の把握のために「農産物受払帳」で米・麦など農作物の種類ごとに収穫時・販売時の数量・金額を「販売用」「事業用」「家事用」に区分して記録・整理します。
「収穫基準」を簡略化できる農作物
これを見ると「販売高だけを収入計上しても一緒ではないか…」と思う方もいらっしゃるかもしれません。そのため、青色申告者については、米麦等以外の「野菜等の生鮮な農作物」「その他の農作物」の収穫時の記帳は行わず、販売時の数量・単価・金額を記帳するのみで構わないという特例が設けられています。なお、この「生鮮な農作物」は収穫時から消費までの期間が比較的短いものに限定されますので、果実のうち、みかん・りんご・栗やいも類などはこれに当てはまらないこととされています。