提出が楽になった配当所得の選択制度
上場株式の配当金は、所得税15.315%と住民税5%が源泉徴収済の状態で支払われますが、実際の申告は総合課税・分離課税・(特定口座の場合)申告不要と課税方式が選択できます。
また、課税所得900万円未満の場合、配当控除の控除率の関係で、所得税と住民税で申告方式を変えることによってかかる税金を減らせるというテクニックが存在します。
所得税等の確定申告時には総合課税を選択し、その後市区町村に住民税の申告書提出等の所定の手続きを行うことで、住民税側は申告不要を選択、という手続きが取れるようになっていました。さらにこの申請の二度手間を無くすため、令和3年分確定申告からは、申告書第2表の「住民税に関する事項」に「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」というチェック欄が新設され、ここにチェックを付けておけば、市区町村に手続きを取る必要がなく、住民税については申告不要を選択できるようになりました。
ただし、将来選択できなくなります
令和4年度税制改正大綱で「上場株式等の配当所得については個人住民税において、課税方式を所得税と一致させる」という一文があるため、この改正を適用する令和5年分の確定申告書は、おそらく今年新設された「申告不要」のチェック欄は無くなっているものと思われます。
健康保険料等にも影響がある選択制度
この申告方式の所得税・住民税個別選択については、健康保険料や医療費の窓口負担割合についても有利な選択ができるため、社会保障制度の公平な負担という面で見ると課題があるため改正されたとする報道もあります。また、金融所得課税全体の見直しは、令和4年度の税制改正では見送りとなりましたが、その一環であることも事実でしょう。
今後の税制見直しでも、どの程度、どんな所得や資産を持つ人に、どのくらいの負担を求めてゆくのかという「公平性」の判断については、議論を重ねて慎重に決めていただきたいものですね。