株式対価M&Aの特例制度の創設
改正会社法で創設された「株式交付制度」を用い、買収会社(株式交付親会社)が自社株式を対価としてM&Aを行う際に、対象会社(株式交付子会社)の株主の株式譲渡益の課税を繰り延べる制度が創設されます。
〈株式対価M&A:課税の繰延べ〉
対象会社の株主に 買収会社株式を交付 |
対象会社の株主が 買収会社株式を売却 |
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課税なし(繰延べ) | 譲渡益に課税 |
この特例税制では、事前認定を不要とし、現金を対価の一部に用いること(混合対価:総額の20%まで)も可能となります。
〈改正会社法の「株式交付制度」とは〉
今までの会社法では、自社株式を対価として他の会社を子会社とする手段として「株式交換制度」がありました。ただ、この株式交換は、他の会社を完全子会社化する場面でなければ利用することができません。
他の手段を組み合わせたスキームもありますが、コストが掛り、手続も複雑でした。
改正会社法では、完全子会社とすることを予定していない場合であっても、他の会社を子会社とすることができる手段として「株式交付制度」が創設されました。
日本のM&Aでは、買収資金を金融機関の借入で調達する場面が多く見られます。
自社株式が使いやすくなることで、巨額の借入に伴う利払いの負担を避けることができます。
国際金融都市に向けた税制上の措置
〈業績連動給与の範囲拡大ほか〉
現行法では、法人税法上損金の額に算入できる「業績連動給与」は、有価証券報告書に算定方法を記載する必要があり、主に上場企業が対象となっていました。
今回の改正では、投資運用業(投資ファンド)を主業とする非上場の非同族会社等の役員に対し支払われる「業績連動給与」について、契約書を交わしているなど一定の要件の下、損金算入が可能となります。
その他、令和3年の改正では、わが国の国際金融センターの地位を確立するため、ファンドマネージャーの個人所得税・資産課税についても申告の利便性や適性性を高める改正が盛り込まれています。